中古マンションの築年数による違い~1990年代

 このコラムでは年代別の中古マンションの特徴をご説明させて頂きます。

1990年代に建てられたマンションの特徴

 1990年代は1991年にバブル景気が終了、ソビエト連邦が解体され、1995年に阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が起き、windows95がリリースされ、1999年にユーロが誕生した、そんな年代でした。

 個人的には、丁度、阪神淡路大震災があった年に20歳になり、まだバブル景気の余韻に浸っていた90年代後半に大学生活を過ごし、いざ就職という年に就職氷河期を迎えましたので、良い想い出も苦い思いをした時期でもあります。

 マンション業界としては、それまでのバブル期の高級志向から一転し、また女性の社会進出も進み始めた事も相まって、生活の質に注目され始めた年代となります。床暖房や浴室乾燥機がマンションにスペックインされて来たのもこの時期ですし、エコロジーという概念が出て来たのもこの時期になります。

 また、バブル期に価格が上昇し過ぎて郊外へ広がってしまっていたマンション建設用地が都心回帰の傾向に戻ったのもこの時期です。住宅金融公庫の融資枠の拡大や、2%台の低金利政策により新築マンション供給も一気に増え、1994年から8年間も首都圏の新築マンション供給数が8万戸を超える時代となりました。

1990年代の間取りの特徴

 この頃になると、1980年代後半で出始めてきた対面キッチンによるLDKの一体化が主流になってきます。また、床や天井のコンクリートの厚みも150〜180mmとなり、既に一般的となったフローリングは遮音性を考慮し裏側にクッション材が貼り付けられた商品も出回って参りました。

 高さ関係でも、居室の天井高は2400mmが最低寸法となり、またバリアフリーを考慮して洗面所や浴室での段差が無いマンションが出て来たのもこの頃になります。

 なお余談ですが、この頃に合板フローリングが一般的になって来たことと、90年代の後半からシックハウス症候群が社会問題として取り上げられる様になって来たことには密接な関係があると考えております。というのも、この頃になると窓のアルミサッシの機密性も上がり、戸建て住宅に比べて機密性が格段に上がった上に、防カビ剤として当時は規制が無かったホルムアルデヒドが含まれる合板フローリングや接着剤が急激に普及しましたので、新築特有の匂いで体調を崩される方が出て参りました。(その後、社会問題化した事に伴い2003年に建築基準法が改正され、シックハウスに関する規制が掛かる様になりました)

1990年代の設備の特徴

 まず給水管ですが、90年代後半からさや管ヘッダー方式による合成樹脂管(架橋ポリエチレン管/ポリブデン管)が採用され始め、それまでのサビによる腐食のリスクが高かった鋼管に比べて飛躍的に耐久性が向上しました。実際、リノベーションの現場で給水管や給湯管が既に合成樹脂管で敷設されている場合は、コストダウンの為にさや管から先の交換を行なっているぐらい、耐久性の高いものだと考えております。

 他にも前述の通り、床暖房や浴室乾燥機がスペックインされて来たのもこの時期からです。また、それに伴い給湯器の能力も大きくなり、分電盤の電気容量も大きくなって参りました。

 田の字型プランの原型が80年代中盤から形付けられ、90年代には設備も基本的な部分では現代の仕様とそう変わらない所まで来ております。

 フルリノベーションが前提であれば築年数はそれほど考慮しなくても良いのですが、設備配管の交換を伴わない表層リフォームに留める場合は、90年代後半からの物件が適しているにでは無いかと思われますので、ご参考にして頂ければ幸いです。